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トランスメディア提供アイコン01 ★ 映画 『Into the Wild』by Sean Penn

Film No.4
『 イントゥ・ザ・ワイルド (Into the Wild) 』 <2007/米>
by Sean Penn at シネセゾン渋谷
公式サイト
imdb

★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★+☆ ☆ (8.5)

主人公クリスは、裕福な家庭に育つが、実はその家庭が“偽り”の家庭だったという事実をある時に知ってしまう。自分が今まで信じていたものに裏切られ、絶望し、その虚構の家庭とそれを作り出した者たち、そして社会をも拒絶するようになる。そして、真実を求めて、アラスカという大自然を目指して旅を始める。

・彼が信じていたもの=両親=人間
・家庭=両親が作り出したもの=人間が作り出すもの=虚構
・自然=人間の関わらないもの=偽りのない世界=真実の世界

という公式がおそらく彼の中にはあったのだろう。

主人公は読書に傾倒しているわけだが、それはおそらく本に書かれたものが真実か虚構であるか、それを信じる信じないかは、読む者が自らの判断で決められるからではないだろうか。

アラスカに向かう途中、主人公のクリスは多くの人間と関わることになる。彼らは皆、自分の信じる真実に忠実に生きている人々だった。神の愛を真っ直ぐに信じる老人、束縛的社会から離れ、自由を信じるヒッピー夫婦、重労働者でありながら、現状を受け入れ、愚痴ることなく、豪快に人生を楽しんでいる男など。

そんな中で、クリスは様々な“愛”を見ていく。彼らは、クリスを受け入れ、クリスにそれぞれの形の愛情を注ぎ、もっとクリスと共に時間を分かち合いたいと願うのだが、その彼らの思いを、クリスは「自分はアラスカを目指して旅をする」という信念の下に、断ち切って、旅立って行く。

彼はほぼ全てをそぎ落とし、大自然の中で、自然と1対1で対峙する。虚構に満ちた人間社会から離れ、人間の手が一切加わっていない自然=真実の中に身を置き、自分という人間の真実を探す。自然に果敢に挑み、川下りでは自然に打ち勝ち、ヘラジカ猟では自分の無力さを思い知らされる。

アラスカでの生活の中で、彼は、自然の厳しさを感じることはできても、自然の中、1人では真の喜びを得られないこと、他の人間との関わりがなければ、喜びは空しいもの、人生は空しいものに過ぎないことに気が付き、社会に戻る決心をする。しかしその頃には時すでに遅く、自然はどこまでも厳しく、彼のそんな気付きと希望を叩き潰す。そして彼の命を奪う。

しかし彼は自分は人生を全うしたとのメッセージを残して死んでいく。自らの信念を貫き、自然の中にたったひとり身を置くことによって、真実=人と分かちあうところに真の生きる喜びがある、という答えを見出したことで、旅に際して自らに課した使命を果たしたことに満足だったのだろう。

映画を観ながら、エミール・ハーシュって『ギルバートグレイプ』の頃のディカプリオに似てるな~なんて思っていたら、パンフレットに“ショーン・ペンは主人公にディカプリオを想定していた”と書いてあって、ほぅ、と思った。映画の中のエミール・ハーシュは『ギルバート…』のディカプリオが持っていた、純真で真っ直ぐな笑顔の少年ぽっさに、精悍であり意固地で強い信念を持つ青年さが合わさり、さまざまな顔を併せ持った、複雑なしかし一方でシンプルな人間としての魅力を見せていた。

とても心に残る作品だったので、映画を観た夜に、UKのamazonからDVDを購入し(他にもついでにいろいろ買っちゃった。だって今1ポンド=158円!?)、原書も手に入れて、これから読み始めるところ。

[心に残ったセリフ]

Wayne: This is a mistake. It's a mistake to get too deep into all that kind of stuff. Alex, you're a hell of a young guy, a hell of a young guy. But I promise you this. You're a young guy! Can't be juggling blood and fire all the time!

Chris: I'm going to paraphrase Thoreau here... rather than love, than money, than faith, than fame, than fairness... give me truth.

Chris: Happiness only real when shared.


by brisa_del_mar_7 | 2008-10-24 19:16 | 映画

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